今回は、人材派遣業界の動向、主に労働者の働く意識について取り上げてみたいと思います。
慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科の高橋俊介教授は、バブル期を知らない現代の20代は「ガツガツ働くより、『ゆとり』を重視し、10代後半ともなるとそういう意味での上昇志向すらなくなっている」(東洋経済新報社『人材派遣を10倍活用する本 人材派遣データブック2006』より)と指摘しています。
彼らは親のリストラによるさまざまな現実を目の当たりにしている世代であるため、「いくら頑張っても何かあればリストラされるかもしれない」というきわめて現実的な考え方を持っています。ですから、いわば、高橋教授も指摘するように「仮に会社を辞めても、なんとか食べていける“手に職”志向が強い」(前出)のです。
ですから、彼らの多くは派遣会社に登録し、さまざまな職務に就いて試行錯誤をすることに抵抗がありません。これらの試行錯誤をすることによって、最終的に“手に職”が付けばいいのだと考えているわけです。
上記のいわゆる“成長志向”の傾向は、「給料を上げたい」「出世したい」という気持ちが高い30代以降にも強く表れています。バブル崩壊を目の当たりにし、一つのキャリアをまっとうすることが困難な時代であることを知っているだけに、生き残るためのキャリアチェンジに対してもそれほど抵抗はありません。そして、キャリアチェンジの過程で派遣会社への登録を行う例もあるわけです。
また、リストラなどの理由からキャリアチェンジを迫られた40代以降、定年退職したものの、さらに自分の経験を活かして働こうとする60代以降の方の派遣会社への登録も増えています。
このように、今、派遣会社に非常にさまざまな年齢層が登録しており、企業で就労するようになっています。今後は、非正社員をいかに有効活用できるかが企業経営にとって重要なファクターになっていくことでしょう。
そして、その担い手である人材派遣業企業の役割は、社会的にも非常に大きなものといえるのです。
前回は、働く人の意識が多様化してきていることについて取り上げました。
しかし、その多様化の一方で、やはり正社員及び社員として就労してバリバリと働き、安定した収入を得たいという労働者が多いこともまた事実といえます。
ある派遣求人サイトを運営する企業が、サイト利用者に向けて「派遣の仕事探しで重視されるものは?」という意識調査を行ったところ、次のような結果が出ています。
まず、「派遣で働く(働くことを検討している)理由」については、「自分の都合に合わせて働ける」「いろいろな企業で働ける」「人間関係に縛られないから」「自分のやりたい仕事だけできるから」といったような、「派遣スタッフならでは」の理由がやはり上位に来ています。
しかし、一方では「希望する条件に合う正社員の求人がない」「正社員で就職できなかったから」という意見も目立ちます。
また、「就業したいと思っている形態」については、複数回答ではあるものの6割近くが「正社員」と回答しています。
これらのことから、派遣スタッフとして働いている労働者は、実は正社員志向が高いということが浮き彫りになってきます。
この「正社員志向」の高さに呼応するように、いま注目されているのが「紹介予定派遣」です。
社団法人日本人材派遣協会の調べでは、回答のあった人材派遣会社434社での紹介予定派遣人数(紹介予定派遣で職業紹介を経て直接雇用に結びついた労働者数)の合計は、実に10,471名(平成16年度実績)にも及んでいます。
営業・企画職、営業事務、経理・財務・会計・英文会計の業種での紹介予定派遣が多く、それまでのキャリアを生かして大企業に就職したい! という派遣スタッフの注目を集めているのです。
扶養の範囲内で働きたい人から、自分のスキルを存分に発揮したい人、そして正社員として安定した収入を得たい人まで、派遣スタッフの就労意識は実にさまざま。これら派遣スタッフの要望にどこまで迅速かつ的確に応えていけるかが、人材派遣事業を成功させる大条件となるわけですね。
以下、9月7日の日経ネットニュースに掲載された記事からです。
人材派遣会社の間で年末商戦に向けた派遣販売員の獲得合戦が始まっているようです。例年なら9月中旬ごろから始まる人材派遣会社への求人依頼が、今年は宝飾ブランドを中心に8月から急増。
各社は派遣要員の確保を急いでいる模様です。また、三越など百貨店、ヤマダ電機など家電量販店も募集時期を早めたり、独自の募集強化策を打ち出したりしている。人手不足感が強まる中、小売り各社は最大の商戦期を見据え、人手確保を緊急の課題として、取り組んでいるようです。
なお、派遣大手パソナでは、8月末時点で年末商戦向けの求人依頼が1000人近く入ったそうで
、例年は8月末にはほとんどなかっただけに、異例のことのようです。販売職専門のスタッフサービス・セールスマーケティング(SSM、東京・新宿)でも、8月の年末商戦向け求人が前年同月比2倍の約300人に達した模様です。
こういうニュースを見ると、本格的に日本の景気も上昇しているのかな~と感じますが、そんな矢先、今年4-6期のGDPが3四半期ぶりマイナスという発表がありました。なかなか景気の先行きを読むのは難しいですが、いずれにしても、今後、ますます派遣会社の役割が重要になることは間違いなさそうですね。
派遣業界や人事関連のお仕事をされている方はご存知の方が多いと思いますが、この10月から改正雇用促進法が制定されました。
これによって、それまで「努力義務」とされてきた労働者の募集・採用時の年齢制限は禁止となりました。これまでは、募集・採用時には、いわゆる「35歳まで」という暗黙の壁があり、求人募集の広告などにも年齢制限がごく当たり前に書かれていました。しかし、これがなくなったことにより、少なくとも、応募時に年齢を理由に門前払いをされることはなくなったわけです。
この雇用における年齢制限についてですが、アメリカでは実に40年前、年齢差別禁止法(The Age Discrimination in Employment Act of 1967, 以下「ADEA」とする)によって立法化されています。ADEAでは、採用や解雇、昇進、訓練、報酬といった雇用条件に関して、年齢を理由として労働者を制限したり労働城の機会を失わせるなどの不利益な影響を与えることの一切を禁止しています。そのため、アメリカの応募書類には、年齢や生年月日について記載する項目自体がありません。
しかし、こういった状況下でも、同じ賃金を払うのであれば、一般に物覚えや動作が迅速な若者を雇い入れたいと考える企業は多いものです。しかしながら、自社で差別的な募集や採用を行うと法律違反となってしまうため、派遣会社に依頼をして希望の年齢層の社員を雇おうとする企業が少なからず存在する、といわれています。雇用機会均等委員会でもこれらの状況を鑑み、監視を厳しくしてはいるものの、法の網をくぐり抜けようとする企業は現在も後をたたないといいます。
自由と平等の国といわれる、アメリカでさえもこのような状況なのです。アメリカ以上に年齢に対するこだわりが強い日本の労働市場にあって、この雇用における年齢制限禁止の概念がどこまで浸透し、確立していくかについては、しばらく静観をするしかないでしょう。
『月刊人材ビジネス』という人材ビジネス関連雑誌では、定期的に「派遣スタッフ満足度調査」を行っています。そこには全部で18の項目があるのですが、ここから、人材ビジネスを行う企業が、派遣スタッフに対してどのようなことに気を配らなければならないかをうかがい知ることができるでしょう。ご参考までにご紹介しますので、一度チェックされてみてはいかがでしょう? (参考:『月刊人材ビジネス』2007.10.1/vol.255より)
Q1.事前登録時の電話対応
Q2.登録に訪問した際の対応
Q3.派遣システム説明のわかりやすさ
Q4.スキルチェックの内容について
Q5.面接担当者の対応について
Q6.登録全体の満足度
Q7.紹介された仕事についての満足度
Q8.就業期間中のフォローに対する満足度
Q9.相談・苦情電話のつながりやすさ
Q10.相談・苦情に対する担当者の理解力
Q11.相談・苦情に対する担当者の誠実さ
Q12.相談・苦情に対する担当者の知識
Q13.相談・苦情に対する担当者の迅速さ
Q14.相談・苦情に対する担当者の約束履行性
Q15.登録から就業中までの全体の満足度
Q16.担当者が変更になった場合の満足度
Q17.今後もこの派遣会社に働きたい(再購入)
Q18.この派遣会社を友人に勧める(口コミ)
今回から3回に分けて、人材ビジネス会社の中高年雇用への対策についてお話をしていきたいと思います。
我が国の中高年層は、定年後も仕事を続けたいという意欲がとても強いことが明らかになっています。たとえば、2005年11月に野村総合研究所が対象者500人に対して行った「団塊世代セカンドライフに関するアンケート調査」によると、およそ8割が「60歳を過ぎても仕事を持ち続けたい」と回答しています。
そこで、いったいどのように働きたいかについて聞いてみると、「これまでの会社で定年延長で」というのが最も多く38%、ついで「パートタイムやアルバイトなど時間ベースで働きたい」が約17%、「自分自身、あるいは仲間と会社を作ってみたい」が約16%、「他の会社で契約社員などの雇用形態で働きたい」が約15%、「フリーエージェントとしてプロジェクトごとに仕事をしたい」が約8%と続いています。
しかし、この中高年の就業意欲とは対照的に、現実には、まだまだ定年後の再雇用・転職はまだまだ思うように進まないという現実があるようです。上記のアンケートによると、実際に希望通りに定年後のめどがついている人は全体の4分の1にも満たず、実に5割以上が「未定」と回答しています。このように、中高年の定年後の就業意欲は非常に高いものの、なかなか思うようにいかないという現実がそこにあることがわかります。
しかし、実はこれらのギャップにこそ、人材ビジネス業界のビジネスチャンスがあるともいえるのです。
次回へ続く・・
前回に引き続き、「人材ビジネス会社の中高年雇用への対策」についてお話します。
ここのところの人材不足を背景に、企業側としても優秀な人材には定年後も延長して引き続き働いてほしいと考えています。その一方で、現実問題として会社に「残ってほしくない人」もいます。
つまり「残ってほしい人」と「残ってほしくない人」の振り分けを行っているのです。そこで発生するのが「残ってほしくない人」に対する再就職支援です。労働者から「まだ働きたい」という申し出があった場合には、その企業にとってはもう用なしの人材であったとしてもそのまま放置するわけにはいかず、転職先のあっせんという手続が必要になるわけです。しかし、これは時間もコストもかかることです。
このような企業からの依頼を受け、人材ビジネス会社は、蓄積された豊富なデータベースと人的ネットワークを駆使して、これら中高年層の労働者のマッチングを行います。現在は、大手や中堅の人材派遣会社のほぼすべてが中高年向けの転職支援のための専用部署を設置しています。
しかし、中高年の転職市場には、若い世代にはない難しさがあるともいわれています。特に部長など幹部職を経験した者の場合、収入や肩書へのこだわりが強く、プライドを簡単に手放すことができません。また、技能職に就いていた労働者に対しては、企業側も延長雇用に好意的なのですが、いわゆるゼネラリストとして働いてきたホワイトカラーの労働者には非常に冷たいという現実もあるのです。
そうした現状を受けて、人材派遣会社の中にはさまざまに対策を講じるようになってきているのです。
次回、人材ビジネス会社の中高年雇用への対策(3)に続く。
今年も残すところ、1ヶ月になりましたね。
さて、前回のブログでは、中高年の転職市場には、若い世代にはない難しさがあることを指摘しましたが、そうした現状を受けて、人材派遣会社の中にはさまざまに対策を講じるようになってきています。
たとえば、10年ほど前から中高年派遣スタッフ養成を進めている伊藤忠商事系の中堅人材派遣会社、キャプランでは、登録者に対し、実務能力の試験を実施しています。経理であれば簿記2級程度、営業ならシミュレーションやロールプレイングといったような研修を1週間行い、中高年の労働者の意識改革への一助としています。この試みは着実に効果を上げており、現在は中高年派遣事業も軌道に乗りつつあるようです。
また、パソナグループの中高年の再就職支援会社、パソナキャリアアセットでは、「セカンドライフプログラム」を策定しています。これには、65歳までしっかりと働く「再就職支援」、NPO活動など自分スタイルで社会参加として働く「都会のセミリタイア」、日本から脱出して異文化を体験する「海外暮らし」、田舎で農業などにいそしむ「田舎暮らし」という4つのコースがあり、希望者はそれぞれのコースを、同社のコンサルタントと相談の上、決定することができます。
このような企業の取り組みに対し、厚生労働省などでも中高年の再活用の事業の一部を民間に解放していくようになっています。この規制緩和の取り組みの一つが、2005年から始まった市場化テストです。これは、人材ビジネス関連企業などに対して、全国主要都市部のキャリア交流プラザなどの運営や人材開拓事業を委託するものです。2006年度は人材派遣会社最大手のスタッフサービスグループの再就職支援会社、フェアプレース・コンサルティング・ジャパンが指定された8カ所中6カ所を落札しています。
今後、人材ビジネス業界では、こうした中高年層をどのようにして取り込んでいくかということが一つのカギとなってくることは、もう間違いのないことでしょう。
本日、12月20日、派遣業界にとっては、大きなニュースが流れてきました。
以下、ネットニュースの記事をそのまま掲載します。
「リクルート、スタッフサービス買収へ=人材最大手に-年内合意目指す(時事通信)
情報・人材サービスのリクルート(東京)が人材派遣最大手のスタッフサービス・ホールディングス(HD、東京)を買収する方針を固め、調整していることが20日、明らかになった。買収額は1700億円前後とみられ、年内の合意を目指している。実現すれば人材分野で国内最大となる。
人材派遣業界は、景気拡大を受けた企業の正社員採用の増加などで新たな局面を迎えており、今回の買収を契機に業界再編の動きが起きる事態も予想される。 」
ということで、業界再編の加速化は以前から予測されてましたが、今回のニュースはまさにそれを象徴する出来事ですね。

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